商圏を広げても伸び悩むリフォーム会社の取るべき戦略とは?

こんにちは。船井総合研究所の稲川茂樹です。
今週も最新コラムをお送りします。
今週のコラムテーマは
「商圏を広げても伸び悩むリフォーム会社の取るべき戦略とは?」です。

これからさらに売上及び収益を拡大していきたいと
考えている会社様はたくさんいらっしゃることと思います。
その中で、多くの会社様が取りがちな戦略とはどのようなものであるでしょうか。
弊社がお付き合いをさせて頂くようになった会社様では、
多くの場合「商圏を拡大する」という戦略を採用されることが多いようです。
商圏を拡大するという戦略を取る理由としては、
なんといってもターゲットの絶対数が増えるということが挙げられます。
しかしながら、果たしてこの戦略は一概に正解として良いのでしょうか。
もちろん状況に依るという部分はあるかと思いますが、
もう一つの正解として、“反対に商圏を狭める”という戦略を取り、
即時売上拡大、収益拡大することに成功した事例をご紹介したいと思います。

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埼玉県I社様の事業背景

リフォーム専門コンサルタントとして、様々な会社様にお伺いする事がありますが、
今回ご紹介する会社様はまさに商圏を絞ることで売上及び収益拡大に成功した会社様です。
その会社様は、埼玉県のとある田舎町で、
元々は設備業を営む従業員5人程の会社様でした。その延長で、
リフォームにも本腰を入れて取り組むようになったのが、ここ数年の話です。
元々設備業を営む会社様でしたので、自社で施工できるのが強みの会社です。
順調に売り上げを伸ばし、年間1億円を売り上げるまでに成長したリフォーム事業ですが、
社長様の更に売上拡大をするべく、採用した戦略が「商圏の拡大」でした。
元々30万人程度の商圏で行っていたリフォーム事業ですが、
拡大戦略により埼玉県を超え都内の一部まで広げた商圏は100万人を超えました。
その拡大の中で、売上はどうなったかというと、実は全く伸びなかったのです。

FAST-REFORMビジネス参入の手引き

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I社様の取組みの成果

先ほどご紹介したI社様は、更に売上を拡大するべく商圏を広げたのですが、
売上が思ったように伸びず非常に悩まれました。
そこで、やり方を変えなければならないと考えて取り組んだのが、
今までの戦略と全く反対である「商圏の絞り込み」でした。
商圏を絞り込み、最も注力するエリアを決めたのです。
結果として、年間1億円であった売上は
約1.8倍ペースまで一気に伸ばすことに成功しました。
そして粗利率も1%程上がったのです。
その要因は一体何だったのでしょうか?

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商圏を絞ることで成功した要因とは?

私はこの要因を、大きく分けて3つあると思っております。それは、

  1. 取り扱い商品が、小商圏向きであった
  2. 経営資源を集中できた
  3. 完工までの回転が速くなり、案件を多くこなせるようになった

まず①ですが、元々この会社様は設備屋さんが
バックボーンであることから、取扱いのメインはトイレでした。
平均単価20万円程度の商品が受注の半数以上をしめるような業態であったのです。
このような工事に対して、エンドユーザーはどのような事を求めるでしょうか。
キッチンのように使用者の嗜好が大きく影響するような商品ではないので、
おそらくすぐに取り換えて欲しいというニーズがあるでしょう。
そんなすぐに来て、すぐに取り換えて欲しいというニーズが大きい商品ですので、
訪問時間が遅くなる、遠方のため施工日程が合わせづらくなるという
商圏拡大戦略とはマッチせず、商圏を小さくする戦略の方が適していたのでしょう。

②経営資源を集中できた
こちらに関しては販促量に関することです。
いくらでも販促費を捻出する事ができる会社様であれば問題ないのかもしれませんが、
通常販促予算は年間〇円と決めて取り組んでいる会社様も少なくないでしょう。
ましてや中小企業の経営者様は、予算がどうこうではなく、
ここまでしかかけられないと制限がある会社様がほとんどだと思います。
I社様も例外ではなく、かけて良い販促費は商圏を広げても変わらず、
知らず知らずに“薄い販促”になってしまっていたのです。
具体的にいえば、その大きくなった商圏に販促をかけるために、
市の発行している広報誌に掲載することがメインであったのです。
後日販促効率を計測してみると、
現在の販促の中心であるチラシの方が、3倍程度効率が良かったのです。
そして効率の良いチラシを注力エリアに集中して投下したのです。
現調数は今までの1.5倍程に増え、売上アップにつながったのです。

③完工までの回転が速くなり、案件を多くこなせるようになった
商圏を広くとっていた時は、片道1時間半程かかるエリアも対象であり
効率よく一日に工事を詰め込むことはとてもできませんでした。
しかも、前述したように現調に行くのも、契約に行くのも、
工事日程を合わせるのも、容易ではなく、忙しく案件を消化しているようで、
思った程案件消化が進められていなかったのです。
商圏が小さくなったことで、非常に早く1件を完工することができるようになり、
今まで以上に増えた案件をこなすことができるようになり、
売上アップにつながっているのです。

まとめると、I社様が取り組んだ商圏を絞るという戦略は、
小工事を取り扱う中小企業の会社様に非常に適した戦略であると言えるでしょう。
売上を上げようとして安易に商圏を広げるのではなく、
自社の状況を良く勘案して戦略を決定いただくことをお勧めします。
これからリフォーム事業を展開しようとしている会社様はもちろん、
現在リフォーム事業を展開している会社様も
今回ご紹介したI社様の状況を知って、適切な商圏を選択いただけたらと思います。

以上、「商圏を広げても伸び悩むリフォーム会社の取るべき戦略とは?」
と題してお伝えしました。
来週木曜日もお楽しみに!